スタッフのひとりごと
SAMIの目のコーナー「人の数だけある普通。中央アジアの旅。」
「人の数だけある普通。中央アジアの旅。」
バスはどんどん山を登っていく。
中国からキルギスへの国境越え。
バスに乗った時はあんな暑かったのに、気付いたら雪が降り始めた。
それもそのはず。
周りは7000m級の山々に囲まれて、バスは富士山より高い所を走っている。
バスがキルギスの第二の街「オシュ」に着いたのは深夜。
朝から、丸一日かけての移動。
バスターミナルから街の中心の宿がある所まで、今から歩いて行こうか迷っていたら。
一人のおじさんがやってきて、何かSamiに伝えようとしている。
おじさんが喋っているのはロシア語。旧ソ連の国々の共通語。
ロシア語が分らないSami、おじさんは身振り手振りで喋り続ける。
分かった事は、
おじさんはバスターミナルの夜の警備員ということ。
「おいで、おいで。」 って付いて行った先は、おじさんのオフィス。
ソファーを指さして
「今日はもう遅いし、ここで朝まで寝ていきなさい。」 って言ってくれた。
何回も自分はバスターミナルの警備員やから心配ないからって言って。
「ありがとう、ありがとう。」 って何回も言って、ソファーに横になる。
気づいたら、気持ちよく眠っていた。
朝方、まだ外が暗いうちに、おじさんがやってきて また身振り手振りで会話。
何やら、もうすぐバスターミナルの従業員たちがやってくるから移動してほしいって。 おじさん、ほんまはあかんけど秘密でSamiをオフィスで寝かせてくれたんや。
優しい。
そーいえば、中国でも同じ事があったなー
その日乗りたかったバスが無くて、次の日の朝まで待つことになったSamiがバスターミナルのすぐ外で朝を待っていると。
警備員のおじさんがドアを開けてくれて、防犯カメラに映らないようにSamiを誘導して隅っこにあるベンチで寝たらいいと言ってくれた。
そして同じように、早朝、従業員がくるからって起こしにきてくれた。
まぁ、こんな感じで、 Samiの中央アジアの旅は始まった。
中央アジアの国々、今回周ったのは“キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、カザフスタン”。
未知の国々、人々の暮らしや食べ物や服装どころか、どこに行ったらいいのかも本当にわからない。
だからいつも以上にワクワク。
こういう時も、どうにかなるもので。
バスターミナルのおじさんにお礼を言ってお別れしたあと、
宿に着いたら、なんと、 ガイドブックを持った日本人に会った。
それでガイドブックをの地図を見せてくれて、いろんな見どころや情報を教えてくれた。 そして、次の目的地もすぐに決まった。
すぐ隣の国タジキスタンにはパミールハイウェイっという道がずーっと続いていて
パミール高原の中を走り、アフガニスタンの国境沿いを走り、
すぐにタジキスタンのVisaを申請して、段取りにかかる。
3泊4日かけて、キルギスのオシュからタジキスタンのホローグという街まで、
小さな村々に止まりながら車で走ることに。
この旅は、普段の自分の生活の中にある「普通」とか「常識」の意味とかレベル、範囲って その人その人、個人の周りを囲む環境とか生活とかで全然変わってくるんやって再確認させられた日々になった。
自分の思っとる「普通」や「常識」って
みんなの「普通」や「常識」やないんやって。
例えば夏と冬、家畜と一緒に家ごと移動する人たちの生活。
家畜の糞を乾燥させて、それを燃料にして暖を取ったり、料理したりする事。
ロバに乗って学校に通う事。
お兄ちゃんが弟に馬に乗る時に使うムチを作ってあげるという日常。
パンの焼き方も、
パンの形も、
みんなが一つの大家族のように暮らす村の人々も。
お隣さんが何キロも先に暮らす家族も。
お風呂も、トイレも。
台所も。
スーパーも。
人の数だけある「普通」や「常識」。
そんな事当たり前って頭では分かっとっても、いつの間にか忘れてしまって、自分の作った「普通」や「常識」の中にいる自分。
パミールの自然と、そこに暮らす人々に気づかされた。
この世界にはまだ見たこともない、気付いてもない
いろんな事がまだまだいーっぱいあるんやろなー。
それと見たり、感じたりして気づいたのに忘れてしまっとることも。