スタッフのひとりごと
『現実と現実。』 Sami in Bangladesh.
ニュースをチェックする。
ネットにつながる時は、毎朝。
バングラデシュの首都、ダッカのレストランでテロがあったっていうニュースを読んだ
のはSamiがダッカを出てから2週間後のことでした。
インドからバングラデシュに入国し、いろんな人に助けてもらってダッカ行きの電車に
乗る。
満員で席が取れなかったから約3時間ぐらい立ちっぱなし。。。
この辺りは湿地帯。
水牛が水浴びしていたり、人が池で泳いでいたり、シャンプーしていたり。。
ダッカに着いて右も左も分らず、とりあえず駅から出ようと歩き始めたら、
一人の青年が英語で、
「どこ行くの?」
って。
英語を喋る人は少ないって聞いていたバングラデシュ。
そう、Samiには、
いつも困っているときに、
最高の出会いがあるのです。
本当にこれにはいつも感謝。
たぶん、すごい旅の守り神様がついていらっしゃる。
Sami「どこか安く泊まれるところを探しに行く。」
青年「一人で? 行くところはあるの? 行き方は?」
Sami「う~ん、、、とりあえず、歩いてみようかな。。。」
青年「うん、じゃあ一緒に探そう!」
イスラム教の断食月、ラマダンのホリデーに合わせて帰郷してきた彼の名前は
ビハール。
実は彼、同じ電車の同じ車両に乗っていて、長い間立ちっぱなしのSamiを見ていたらしい。
この国では、女が長い事電車の中で立っている事はあんまり無いらしい。
現に席を譲ろうとしてくれる男の人がいたけど、なんか悪くって、断った。
暑いなか、ぐるぐる歩いて宿を探すも
どこもいっぱいか、値段が高すぎるかで、なかなか見つからない。
途方に暮れていると、彼が電話で話し始めた。
電話を切って、笑顔でこう言った。
「僕の家に一緒に帰ろう。家に泊まればいいし、家族もSamiに会いたいって。」
この時の気持ちは文章で表現できない、
胸から込み上げてくる何かを抑えるのに必死で、
何回もありがとうを言った。
家に着いたら、お母さんとお父さんと弟が出迎えてくれて、
お母さんはビハールが止めるまで
「これも、これも、それも、食べて!」
って、テーブルいっぱいにご馳走を並べてくれた。
次の日はビハールがダッカの街のいろんな所に連れて行ってくれた。
何回もローカルバスを乗り継いで。
「ローカルバスを乗り継ぐ。」
簡単そうに聞こえるけど、
字も読めない、言葉も分らない異国の地で、これをするのは本当に大変。
だから、もし一人だったらこの大都会での行動範囲がどんだけ狭かったことか。。。
ビハールのおかげで、ダッカのいろんなところを見てまわれた。
そう、Samiの旅のモットー。
現地の人のように。
市場でヤギ1匹買わされそうになったり、断食月にこっそり開いているレストランで
スパイシーなカレーを食べたり、道端で座
ってチャイを飲んだり。
少年にまじって、クリケット(こっちの野球みたいのスポーツ)したり。
そう、イスラム教でも彼のように、まだ若い子は断食しない人が多い。
一日中ダッカを歩き回って、満喫して、
家に帰ったら、お母さんがご馳走を用意して待っていてくれた。
それをみんなでいただく。
ダッカを出る日は、ビハールがバスターミナルまで連れて行ってくれて、
乗るバスを探してくれて。
最後のお別れの握手は、手が離せなかった。
その2週間後のテロ。
これが現実と現実。
メディアの伝える現実は、テロやIS(イスラム国)。。
Samiの伝える現実は、出会い、優しい心、助け合いと、そこから生まれる笑顔。
これが同じ国の、同じ街にある、
現実と、現実。